近藤 敬子(こんどう けいこ)さん
令和5年度認定マイスター 近藤酒造株式会社 製造部 杜氏
酒造(清酒製造作業)
新居浜唯一、愛媛県唯一
近藤酒造は新居浜にある唯一の蔵元であり、近藤さんは愛媛県唯一の女性の杜氏である。
近藤酒造では自社ブランド「華姫桜」「群青」などを製造している。味わいもあり辛口なのが特徴だ。近年はジンやリキュールなども手掛けている。
近藤さんは、以前、書籍でオホーツク海の氷から微生物を取り出し、それを食品製造に応用できることを知り、そこから少しずつ微生物に興味を持つようになった。
大学時代には酒造りをはじめとする発酵食品全般に必要な醸造の基礎知識を習得した。
縁あって10年以上休止していた酒蔵の復活に携わり、新居浜の地で杜氏として活躍している。
季節を敏感に感じ取る
酒造りは「一麹、二酛、三造り」と言われ、麹を造るところから始まる。
麹はデンプンを糖に変え、酵母は糖をアルコールに変える。
並行複発酵と呼ばれ、この変化が同時に行われることが、日本酒造りは難しいとされる所以だ。
この発酵する過程では単純に1+1が2にならなかったり、自然相手の予想外の出来事も起こり得る。
近藤さんは庭にある梅の木に白い花が咲いたり、庭に飛来する鳥の種類や鳴き声が変わることを感じ取り、五感で四季の変化を敏感に捉える。
四国山地から吹き降ろす冷たい風も酒造りにおけるひとつの大事な要素。
酒造りにとって温度管理は特に重要で、0.5℃単位で管理し発酵を促す微生物の動きをコントロールする。気になって夢にまで見るほどだと言う。
酒を造るタンクの中で発酵する泡が弾ける音の変化も機微に感じ取る。
米が徐々に馴染んでいき、大きい泡が時間を変えて小さくなっていく。その泡が弾ける音も発酵が終わりに近づくにつれ徐々に高い音になっていくという。
地域との共存を通して
近年では、近藤さんの造ったお酒が祭礼時に地酒として神社に奉納されるようになった。
厄除けや神前式などの神事で誰かの人生の節目に自分が造ったお酒が使われると嬉しいと近藤さんは話す。
ジンやリキュールを手掛けることになり、商品の幅が広がったため、地元食材をPRする商品もつくれるようになった。
これらを通じて町ぐるみでみんなで盛りあがれたらいいと意気込む。
近藤さん自身はアルコールにそれほど強くないそうだが、日本酒以外のワインや焼酎の勉強にも励んでいる。
最近はモヒートに使おうとハーブも育てていると嬉しそうに話してくれた。